平成25年3月28日、最高裁判所第1小法廷は、面会交流と間接強制についての決定をしました。
「間接強制申立ての却下決定に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件 」です。
「本件条項は、1箇月に2回、土曜日又は日曜日に面会交流をするものとし、また、1回につき6時間面会交流をするとして、面会交流の頻度や各回の面会交流時間の長さは定められているといえるものの、長男及び二男の引渡しの方法については何ら定められてはいない。そうすると、本件審判においては、相手方がすべき給付が十分に特定されているとはいえないから、本件審判に基づき間接強制決定をすることはできない」とされています。
面会交流は、どうしても、会う場所や日時について、あいまいになりがちです。
前回のコラムでは、調停委員の知識不足をいいましたが、本件は「高知家庭裁判所において、相手方に対し、抗告人と長男及び二男が、1箇月に2回、土曜日又は日曜日に、1回につき6時間面会交流をすることを許さなければならないなどとする審判がされ、同審判は、同年3月確定した」とありますから「毎月何日の何時からか」「場所はどこか」を審判していない裁判所の完全なミスです。
こんな審判で納得していた弁護士も同罪です。私なら、即時抗告します。
うまくいけば問題はないのですが、元々離婚した夫婦ですから、「つまらないこと」で喧嘩になり、監護をしている親(原則母親)が「子供が会いたくないといっているから会わせない」という言い訳をつかって、会わせないということがあります。
会う場所や日時について、あいまいな調停にしておくと、「間接強制」もできなくなり、もう一度、調停のやり直しからスタートしなければなりません。
私の定型案は、前のコラムに記載したとおり、夫の場合「原則、毎月、第1日曜日と第3日曜日の午前10時から午後2時、場所は○○ホテルのロビー。双方の親が同意した場合に限り、変更することができる。双方の意見が合わず会えなかった場合、翌日曜日に変更し、会えなかった場合でも回数は減らさない」と書いておいて、あとは、将来の事情の変更も考えて、柔軟な条項を記載しています。
私のこれまで取り扱った調停条項にミスはありません。
もっとも、審判までいっても、間接強制を無視した母親はいました。
結局、高校生になって、父親の所に家出してきて、親権変更の調停が成立しました。
判決全文は「全文」のとおりです。
1 本件は、未成年者の父である抗告人が、未成年者の母であり、未成年者を単独で監護する相手方に対し、抗告人と未成年者との面会及びその他の交流(以下「面会交流」という)に係る審判に基づき、間接強制の申立てをした事案である。
2 原審の適法に確定した事実関係の概要等は、次のとおりである。
(1) 抗告人と相手方は、平成12年12月に婚姻の届出をし、平成14年9月に長男を、平成18年7月に二男をもうけた。
(2) 平成24年2月、高知家庭裁判所において、相手方に対し、抗告人と長男及び二男が、1箇月に2回、土曜日又は日曜日に、1回につき6時間面会交流をすることを許さなければならないなどとする審判がされ、同審判は、同年3月確定した(以下、この審判を「本件審判」といい、上記の面会交流を命じた条項を「本件条項」という。)。
(3) 抗告人と長男及び二男との面会交流は、本件審判後、平成24年3月に2回行われたが、同年4月以降は行われていない。
(4) 抗告人は、平成24年5月、高知家庭裁判所に対し、本件審判に基づき、相手方に対し本件条項のとおり抗告人が長男及び二男と面会交流をすることを許さなければならないと命ずるとともに、その義務を履行しないときは相手方が抗告人に対し一定の金員を支払うよう命ずる間接強制決定を求める申立てをした。
3 原審は、本件審判は、面会交流の大枠を定めたものにとどまり、相手方が履行すべき義務内容が具体的に特定されているとは認められないから、本件審判に基づき間接強制決定をすることはできないとした。
4(1) 子を監護している親(以下「監護親」という。)と子を監護していない親(以下「非監護親」という。)との間で、非監護親と子との面会交流について定める場合、子の利益が最も優先して考慮されるべきであり(民法766条1項参照)、面会交流は、柔軟に対応することができる条項に基づき、監護親と非監護親の協力の下で実施されることが望ましい。一方、給付を命ずる審判は、執行力のある債務名義と同一の効力を有する(平成23年法律第53号による廃止前の家事審判法15条)。監護親に対し、非監護親が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる審判は、少なくとも、監護親が、引渡場所において非監護親に対して子を引き渡し、非監護親と子との面会交流の間、これを妨害しないなどの給付を内容とするものが一般であり、そのような給付については、性質上、間接強制をすることができないものではない。したがって、監護親に対し非監護親が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる審判において、面会交流の日時又
は頻度、各回の面会交流時間の長さ、子の引渡しの方法等が具体的に定められているなど監護親がすべき給付の特定に欠けるところがないといえる場合は、上記審判に基づき監護親に対し間接強制決定をすることができると解するのが相当である。
(2) これを本件についてみると、本件条項は、1箇月に2回、土曜日又は日曜日に面会交流をするものとし、また、1回につき6時間面会交流をするとして、面会交流の頻度や各回の面会交流時間の長さは定められているといえるものの、長男及び二男の引渡しの方法については何ら定められてはいない。そうすると、本件審判においては、相手方がすべき給付が十分に特定されているとはいえないから、本件審判に基づき間接強制決定をすることはできない。
5 これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。論旨は採用することができない。