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金銭給付も含む離婚の合意ができている場合の履行確保方法

 夫婦双方が協議離婚に同意し、親権者・慰謝料・財産分与・養育費の話がすべてついたとします。
 慰謝料や財産分与(金銭による解決)は一括でもらえるにこしたことはありませんが、分割払いにならざるをえないかも知れません。養育費は一括先取りということは難しいですね。

 この場合、将来の履行に全く心配のないときは、合意書を作成しておくだけで全く問題がありません。
 しかし、将来の履行に、少しでも疑問がある場合には、調停調書や公正証書にしておくのがよいでしょう。

 なお、私は弁護士の仕事をしているので、無事約束どおり履行されている場合は、法律相談を受けたり、事件の依頼をされることはありません。
 しかし、「合意したのに約束を守ってくれない」という相談や事件の依頼は数知れずあります。

 「将来の履行に心配がない」といっても、長期間にわたることも多いですし、相手方の職業・収入や再婚など事情が変わる場合がありえます。

 なお、約束を守ってもらえない場合は、文句はいったものの、泣き寝入りということもありえます。

 そうならないために、約束は、家事調停調書か公正証書にしておくことをおすすめします。
 家事調停調書や公正証書は「債務名義」といって、約束どおりの履行がないときは、強制執行ができるのです。

 なお、夫婦双方が協議離婚に同意し、親権者・慰謝料・財産分与・養育費の話がすべてついていたとしても、家事調停を申立てることができます。
 双方が出頭して、その話が非常識なものでない限り、その日のうちに調停が成立します。
 印紙代金と郵便切手代しかかかりませんから、公正証書にするよりお得です。
 また、戸籍に「調停離婚」と記載されるのがいやであれば、離婚自体については「協議離婚届けを速やかに届ける」と調停調書に記載し、少なくとも1人は相手方の親などが証人欄に署名・押印した離婚届を相手方から受取り、慰謝料・財産分与・養育費のみ具体的に調停調書に記載してもらうことも可能です。
 この場合、無事、離婚届が受理されれば(相手方の不受理申立の届けがなければ)、戸籍には「調停離婚」ではなく「協議離婚」と記載されます。裁判所帰りに、その足で離婚届を提出しましょう。

 また、公証人役場に行って、慰謝料・財産分与・養育費についての公正証書を作成することも可能です。財産分与で、名義変更可能なものは、公正証書作成前に名義をかえておきましょう。
 必要書類などは、公証人役場に問い合わせれば教えてくれますし、文面についても、多少は相談することは可能です。
 若干、家事調停よりもお金がよけいにかかるのと、家庭裁判所のように、親身になって手続き案内をしてくれたり、調停委員が調停案を考えてくれるというサービスはありません。

 私自身は、できることなら、公正証書より家事調停の方がお得ですよと勧めています。


 なお、約束が守られない場合には、家事調停の場合は、家庭裁判所調査官による履行勧告や履行命令、また、給料などの強制執行ができます。また、公正証書の場合は、給料などの強制執行ができます。

 また、口約束や単なる書面では、強制執行はあり得ないとして、履行を怠ることがあり得ますが、調停調書や公正証書にしておけば、給料などの強制執行を受けること自体がいやだとして、任意に履行してもらうことも期待できます。

 給料などの強制執行は、弁護士に依頼した方が手数はかかりません。
 強制執行の手続きだけなら、費用も比較的低廉です。
 なお、自分で一からやろうとすると大変です。結構強制執行の手続きは、かなり「ややこしい」と思っておいてください。
 自分でやろうとして、何回も何回も代金不要の法律相談で聞いている人がいます。裁判所は、誤りの箇所を一度に教えてくれません。裁判所に「ここが間違い」といわれて訂正すると、「今度は」「ここが間違い」とやられますから、よほど才能がない限り時間の無駄です。
 また、将来の養育費の差押さえも可能です。

 もっとも、離婚した相手の財産が分からない、勤務先も分からない、強制執行できないということであれば、当面、強制執行はできません。
 ただ、破産や個人民事再生で「ちゃら」にされることはありませんから、資力さえ回復すれば、まとめて強制執行することができます。
 転居先が不明の場合は、弁護士に相談することをおすすめします。住民票さえ移していれば、転居先がわかります。尾行すれば、勤務先もわかることが多いようです。なお、興信所は1日「何万円」を覚悟しておいてください。



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