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300日規定

 民法772条2項の「婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する」とする推定規定の当否についての議論がなされています。

 この規定は、子の父親が、前の夫か後の夫かについて、出生届を受理するときに、市区町村の戸籍吏が迷わないようにということで定めてられています。

 まず、民法772条1項で「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する」と定めています。
 そして、民法773条で「女は、前婚の解消又は取消しの日から6箇月を経過した後でなければ、再婚をすることができない」としておいて、民法772条2項で「婚姻の成立の日から200日を経過した後」又は「婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子」は「婚姻中に懐胎したものと推定する」としています。

 市区町村の戸籍吏が、とりあえず、子の父親として誰を記載するのか迷いようがありません。


 ただ、戦前、司法省(現・法務省)昭和15年7月30日の民事局長回答により「婚姻の成立の日から200日を経過した後」でなくても、「結婚中に子が出生した場合、結婚前の内縁関係を調査せずに出生届を受理すべき」とされています。
 つまり、子が生まれたとき、前日までに婚姻届が提出されていれば、夫の子と推定しているわけです。
 今でこそ「できちゃった婚」で生まれた子を「夫の子」と認める「根拠」と言われていますが、昔は「子なきは去れ」といって、結婚しても籍を入れず、子供ができないなら、そのまま「内縁解消」、子ができてから「一人前の」「嫁」として、籍が入るという例が結構ありましたから、婚姻届は200日前にでていなくても、婚姻届を出したからには子の父親だろうということですね。

 この民事局見解によっても、市区町村の戸籍吏が、とりあえず、子の父親として誰を記載するのか迷いようがありません。民法773条で「女は、前婚の解消又は取消しの日から6箇月を経過した後でなければ、再婚をすることができない」という規定がありますから、元気に出生していれば(極端な早産・遅産がなければ)、前の夫の子か後の夫の子か迷いようがありません。また、形式的に考えても、母親が再婚していれば、新しい夫の戸籍に入れればいいわけです。
 民法772条2項の「婚姻の成立の日から200日を経過した後」に出生した子は「婚姻中に懐胎したものと推定する」は「骨抜き」にしても問題ありませんでした。

 もっとも、民法772条2項の「婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子」は「婚姻中に懐胎したものと推定する」を「骨抜き」にしますと、もろに、「前の夫の子」か「後の夫の子」か、市区町村の戸籍吏に判断できなくなります。

 基本的に、法律家は単純なものですから「戸籍の記載は記載」、あとで、嫡出子否認、あるいは、親子関係存在確認・親子関係不存在確認の調停や訴訟で「けり」をつければ問題がないと単純に考えているんですね。
 私などは、今でも、そう思っています。
 DNA鑑定で、誰が子の親かなどすぐわかります。
 「前の夫」、「後の夫」、あるいは「全くの第三者」かは、疑問が生じた時点において、嫡出子否認、あるいは、親子関係存在確認・親子関係不存在確認で医学的に証明して是正すればいいという考えです。もし、「全くの第三者」や「聖霊」による妊娠なら、父親欄を空白にしておけばよいのです。「聖霊」による妊娠なら、遺伝子が半分になりますが、それはそれでいいでしょう。

 今の議論は、300日という期間を短かくするという案が中心ですが、期間を短くしても、問題が起きる時は、起きます。
 ちなみに、人間の場合、出生は受精後平均266日とされています。10月+10日=310日ではありませんからご注意下さい。10月10日生まれの人も、恥ずかしがることはありません。


 ただ、あくまで立法の話ですから、世論のとおりすればいいのですが、期間をいくら短くしても、根本的な問題解決にはなりません。
 つまり、嫡出子否認、あるいは、親子関係存在確認・親子関係不存在確認の調停や訴訟で「けり」をつける必要性は残ります。

 そもそも、子の父親が誰かなど、母親にしかわかりませんよ。



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