俗に「勘当」という言い方が使われます。
親が子に対して親子の縁を切ることです。
「親でもなければ子でもない。顔も見たくない。今日限り出ていけ」というものですね。
戦前は、法的に「勘当」が認められていたことがあったらしいのですが、民法の改正などで、現在は、実際の親子間(養親子を除くことになります)の親子の縁を切ることは出来ません。
まず、勘当ということばを使う方のうち多いのは、子の不行績から、相続の権利のを剥奪するために「勘当」したいというものです。
被相続人が「相続権を持つ人間に著しい非行の事実がある場合に家庭裁判所に『推定相続人廃除調停申し立て』をすることによって、推定相続人の持っている遺留分を含む相続権を剥奪する」制度は、民法第982条に現存します。
家庭裁判所に申立てるのですが「被相続人に対して精神的苦痛を与え、または名誉毀損する行為であって、それにより被相続人と当該相続人との家族的協同生活関係が破壊されその修復を著しく困難ならしめるもの」をいいます。
よくある例は、被相続人への虐待や被相続人への重大な侮辱、賭博を繰り返して多額の借財を作りこれを被相続人に支払わせたとか、重い犯罪行為をして判決を受けたとかというものです。
ただ、家庭裁判所は、相続人廃除の申立てに対し慎重に審理します。実際に相続廃除が認められた事例はさほど多くありません。
注意していただきたいのは、相続人廃除が認められた場合においても、廃除された相続人に子がいる場合、代襲相続といって、排除された相続人の子が、廃除された相続人の分の遺産を受取ることになります。子は憎いし、孫もよからず思っている場合、あまり意味ありませんね。
なお、遺言で、被相続人が遺言書に推定相続人を廃除する旨を記載し、遺言執行者がそれに基づいて家庭裁判所に相続人排除の請求をするということも、法的には可能ですが、遺留分排除の意図が見え見えですし、肝心の本人が死亡している、つまり「死人に口なし」なので、認めらる可能性はかなり低いと考えておかれた方がいいでしょう。
また「賭博を繰り返して多額の借財を作りこれを被相続人に支払わせた」場合は、相続人廃除などしなくても、「○○には相続させない」と遺言をしておけば、多額の借金の肩代わりは、生前贈与として「特別受益」を得たことになりますから、現実問題として、仮に遺留分減殺請求がなされても、特別受益分を計算すると、遺留分は「0」で、相続人廃除の手続きをとらなくても、目的を達することがあるでしょう。
ちゃんと、借金の肩代わりの日、金額の証拠を保存しておくのが賢明です。
次に、勘当ということばを使う方のうち多いのは、子が借金をつくり、自分のところに借金取りが来るという場合ですが、連帯保証人になっていなければ、支払う必要は全くありません。
通常の金融業者は、親に請求したい場合「息子さんが行方不明になっている。住所・連絡先を教えてほしい」と言ってきます。本音は「肩代わりして支払ってほしい」ということなのですが、「肩代わりして支払ってほしい」と言うと、金融庁のガイドライン違反で、業者が営業停止処分を受けますから、遠回しに言っているだけです。
この場合、単に「息子は行方不明です」と言えばいいだけです。なお、捜索人願いを警察に出して、番号を控えておけば完璧です。2度と現れることはありません。
一般の債権者は、「営業停止」ということがないので、簡単に引き下がることもないでしょう。
その場合は、弁護士に依頼して、内容証明郵便を出せば、通常来なくなります。来るようでしたら、弁護士に依頼して、裁判所に申し立てて、わずかの保証金を積んで「面談禁止の仮処分」をとれば(録音するなど証拠があれば、まず認められます)、普通来なくなります。
「面談禁止の仮処分」が出ているにもかかわらず、来たり電話をかけてきたりしたら、「恐喝未遂」「強要未遂」「住居侵入」で、警察は動いてくれます。