最高裁判所は平成25年9月4日、結婚していない男女間の子(婚外子。嫡出子でない子)の遺産相続分を結婚した夫婦の子の2分の1とした民法の規定について「法の下の平等」を保障した憲法14条に違反し、違憲・無効とする初判断を示ししました。
報道には、日本の家制度をとりいれた100年以上前の民法の古い規定が、法の下の平等という点から違憲となったという解説があります。
欧米先進諸国でも、あまり遠くない過去に、同じような規定がありました。宗教上の理由が大きいですね。欧米先進諸国には、事実婚が多くなったという事情もあります。
弁護士という立場からすると、嫡出子側でも、嫡出子でない子の側でも事件を手がけますから、どちらということはありません。
今、嫡出子でない方の事件を持っていますから「朗報」です。
それぞれ言い分があるわけで、嫡出子でない子からすれば「両親が結婚していないという理由で、なぜ半分なんだ」という言い分があり、嫡出子からすれば「平和な家庭を壊したうえ、さらに財産までとろうというのか」という言い分があります。
もちろん、一番悪いのは、被相続人である男性なのですが、死んでいるから争いになっているわけで、文句を言ってもはじまりません。
なお、妻が離婚に応じて、愛人が正妻になれば、民法789条1項により「父が認知した子は、その父母の婚姻によって嫡出子の身分を取得する」(「準正」と呼ばれます)ということですから、通常の先妻と後妻の子と同様、子の相続分は平等です。
また、妻との間に子がいなければ、妻が2分の1、愛人の子が2分の1です。
これは、妻の側からすれば、大ショックです。
遺言をすれば、子の相続分を半分にまで減らせます(0にはできません。子は法定相続分の2分の1の遺留分があります)。
さらに、被相続人が、その気になれば、相続分を減らそうとすれば、様々な方法があります。具体的な方法があるのですが、ここでは述べません。
なお「本決定の違憲判断は、平成13年7月当時から本決定までの間に開始された他の相続につき、民法900条4号ただし書前段の規定を前提としてされた遺産分割審判等の裁判,遺産分割協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼさない」とされていますから(純粋な法律論からすれば、論理矛盾と考えられます)、現在未分割のものに限られ、遺産分割済みのものは、裁判所に、再分割の調停・審判を申し立てても無駄です。
自分の扱った事件をチェックしましたが、平成13年7月当時から平成25年9月4日までの間にはありませんでした。