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慰謝料を準消費貸借にしてはいけません

 「準消費貸借」という言葉をご存じでしょうか

 民法588条に「消費貸借によらないで金銭その他の物を給付する義務を負う者がある場合において、当事者がその物を消費貸借の目的とすることを約したときは、消費貸借は、これによって成立したものとみなす」と記載されています。

 例としてあげられる例は、継続的売買契約をしていて、終了にあたり、現在の金額を相互に確認し、その金額を「借りたもの」として、準消費貸借契約を締結するものです。

 条文では「消費貸借によらないで」とありますが、既存の消費貸借上の債務をまとめたりする目的で、消費貸借契約上の債務を準消費貸借の目的とすることも認められていて、「準消費貸借」といえば、圧倒的に、何回も貸したり返したりしていて、どれがどの返済かわからなくなるなど複雑化を避けるために、1枚の「消費貸借契約書」(借用証書)を交わすという例が多いようです。

 つまり、借主が既に債務を負担しているときに、それを 消費貸借の目的とする契約(貸金契約)が準消費貸借契約といっていいと思います。

 いくつも金銭消費貸借があると、どの返済として弁済したかがあいまいになり、下手をすると、一部の契約が時効にかかったりしますから、紛争のもとですね。
 私人間の消費貸借をまとめれば、その時点から、10年の消滅時効とわかりやすくなります。

 ここで注意することは、「準消費貸借」が締結していない場合には、本来なら、貸主が、もとの債権の存在を主張立証できないと敗訴になるのに比べ、「準消費貸借」が有効に締結された場合、借主が、もとの債権の不存在を主張立証できないと敗訴になるというという違いがあります。
 準消費貸借を締結すると、貸主は、それまでの借用証を返したり、必要ないと廃棄したりするという理由からです。


 ちなみに、準消費貸借にしてはならない場合があります。
 破産法253条1項3号には「破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」は非免責債権として、破産しても免責は受けられません。つまり、借金がチャラにならないのです。

 この場合、慰謝料請求権を、準消費貸借に改めた場合はどうでしょう。
 理屈のうえでは、債務者が破産すれば、免責となってしまいます。
 例えば、不倫など男女間の問題を解決する慰謝料を支払う、少し余分に上乗せする、だから消費貸借にしてくれと言われた場合、相手は、自己破産して借金をチャラにしようとたくらんでいるかもしれません。不倫など男女間の問題を解決する慰謝料は「破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」で「非免責債権」です。
 借金が支払えず、実質支払い不能の場合は、そこまで露骨にすると非免責債権に該当しないと裁判所が判断する場合があるかもしれませんが、争点がふえて、金と時間がかかります。
 契約時に借金がない場合で、その後、借金まみれになって自己破産されると、非免責債権と判断されることが多いと思います。

 ですから、不倫など男女間の問題を解決する慰謝料を支払う約束をしたときは、「慰謝料」と明記した一筆をとっておく必要があります。

 これは弁護士なども同じで、不倫など男女間の問題を解決する訴訟上の和解契約が成立したとき、慰謝料の金額について合意した場合、通常レベルの弁護士なら「和解金」という名目の和解調書はつくりません。示談や公正証書の場合も同じです。
 必ず、「不貞による慰謝料債権」「婚姻予約不履行による慰謝料債権」と、和解条項に明記します。
 あとで、自己破産をされた場合など、トラブルが起こることは必至ですし、弁護士過誤として損害賠償請求をされかねません。



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