法律的にいう「結婚詐欺」という言葉の意味をご存じでしょうか。
法律的にいう「結婚詐欺」というのは、結婚する気が全くないのに、あたかも結婚するようなそぶりをみせて、金銭を借りたり、金銭や高価な物をもらったりすることです。
あくまでも「詐欺罪」ですから、金銭、財物(価値あるもの)を騙しとられなければ「詐欺罪」として罰せられません。
女性が「結婚する気もないのに」「結婚するといったから」「肉体関係をもった」から、「詐欺罪」で処罰されるべきだと主張する人がいます。法律相談などで、告訴状の書き方を教えてほしいといった相談をする人もいます。
女性が「結婚する気もないのに」「結婚するといったから」「肉体関係をもった」場合でも、金銭など財物(価値あるもの)を騙しとらなれない場合、つまり「肉体関係」を持ったにすぎない場合は「詐欺罪」で処罰されるということはありえません。
つまり、刑事問題になりようがありません。
そうすると全くの泣き寝入りかということになりますが、金銭など財物を騙しとらなれない場合でも、貞操の違法な侵害として慰謝料請求をすることは可能です。つまり、民事で争うべき問題です。
通常は、相手が独身というのを信じた場合でしょうが、仮に、相手に妻がいることを知っていても、妻と離婚するという「嘘」をつかれ、それを信切った場合ても、損害賠償請求が認められる可能性があります。
なお、名古屋高等裁判所昭和59年1月19日判決(判例時報1121号53頁)もご参照下さい。
もちろん、女性が、男性が、結婚する気が全くないのに、あたかも結婚するようなそぶりをみせたため、その男性と結婚できるものと信じて、何十万、何百万、何千万の金銭を貸したり、あげたりしている場合には、貸金返還請求、あるいは、詐欺による不法行為として損害賠償請求ができます。
「貸した」という場合は、借用証などの証拠さえあれば、貸金返還請求ですから立証が容易ですが、「あげた」という場合は、「結婚する意思がなかった」ということを主張・立証しなければならず、なかなか立証が困難な場合があることだけ頭においておいて下さい。
また、いずれの場合においても、たとえ判決で勝っても、男性に定職や財産がなければ、判決は「紙切れ」に終わる可能性があります。
なお、女性が、交際・同居中に、お金は自分の方が余分に出していたから、差額を返せという訴訟も理屈では全く不可能ではないかも知れませんが、現実問題として難しいでしょう。
別れる時に「慰謝料として○○○万円支払う」とか「交際・同居中の精算金として○○○万円支払う」という書面を、自筆で書いて印鑑(三文判にて可)を押してもらっておくべきです。
もっとも、女性が、交際・同居中に、お金は自分の方が余分に出していたという前提ですから、判決で勝っても、男性に定職や財産がなければ、判決は「紙切れ」に終わる可能性もあります。
(追記)
韓国刑法第304条(婚姻憑藉等による姦淫)には「婚姻を憑藉し、又はその他偽計により淫行の常習なき婦女を欺罔して姦淫した者は、2年以下の懲役又は500万ウォン(註。56万円)以下の罰金に処する。」と定められているそうです。
前述のとおり、日本では、女性が「結婚する気もないのに」「結婚するといったから」「肉体関係をもった」場合でも、つまり「肉体関係」を持ったにすぎない場合は刑事問題になりようがないのですが、お隣の国では、刑罰の対象となるようです。そういえば「姦通罪」は、韓国刑法では未だ健在です。