配偶者と離婚手続中であるとの言葉を鵜呑みにし、不倫をした人に、配偶者から損害賠償請求を受けた場合に責任はあるでしょうか。
注意していただきたいのは、「独身であるとの言葉を信じた」というケースとは異なることです。
昭和56年12月9日の名古屋高等裁判所の判例があります。
「B(不倫した妻)が、A(不倫の相手の男性)に虚言を弄し、Aがその旨誤信したことは、引用にかかる原判決理由説示のとおりである」
「離婚手続中であるといっても、有夫の婦(註。B)である厳然たる事実が存在する以上、肉体関係に及んだこと自体、有夫の婦との性交行為によってその夫たる者の、夫としての権利を侵害することの違法性を十分認識したうえでの不義行為であることにかわりはないというべきである」
「右のような不義行為の継続関係が夫であるC(Bの夫)の知るところとなっていらい、BC両名の夫婦関係のみならず、その家庭環境全体が破局状態に陥り、協議離婚のやむなきにいたったが、Aにおいては、癒し難い傷痕を残してしまったことが認められるから、本件不義行為におけるAの犯情もまた軽しとしないといわなければならない」
「家庭環境全体が破局状態に陥り、協議離婚のやむなきにいたつたときは、AがBとの右不義行為によつて、当時同控訴人の夫であつたCに対して多大の精神的苦痛を与えたこともまた見易い道理であるから、控訴人甲野の右精神的苦痛は200万円をもって慰謝するのを相当とする。」
「昭和50年1月初めころから昭和52年10月ころ」ですから3年、「離婚手続中」にしては長いですね。
「独身であるとの言葉を信じた」というケースとは異なり、「離婚手続中であるとの言葉を信じた」ケースは、完全に「アウト」です。
考えてみれば当たり前の話ですが、混同しておられる方がおられますから念のため。
なお「独身であるとの言葉を信じた」という場合ですが、相手の年齢、住居、態度(話の内容。自宅に帰る必要が全くない、あるいは、帰りの時間を全く気にしていないかなど)、「独身であるとの言葉を信じた」というのが「嘘」であり、「配偶者がいることを知っていた」という認定をされかねません。
「危うきに近寄らず」が賢明です。
また、配偶者がいるとわかった段階で別れれば、大抵セーフです。