妻がいることを知っていて、情交関係を持った女性から、別れ話を切出した男性への慰謝料請求は認められるのでしょうか。
慰謝料は「貞操侵害」による慰謝料となります。
その昔は、一律「請求棄却」でした。
それを変更したのが、昭和44年9月26日・最高裁判所判決です。
「 女性が、男性に妻のあることを知りながら情交関係を結んだとしても、情交の動機が主として男性の詐言を信じたことに原因している場合で、男性側の情交関係を結んだ動機、詐言の内容程度およびその内容についての女性の認識等諸般の事情を斟酌し、女性側における動機に内在する不法の程度に比し、男性側における違法性が著しく大きいものと評価できるときには、貞操等の侵害を理由とする女性の男性に対する慰謝料請求は許される」との判示です。
事案は「妻のあるアメリカ人男性が日本人女性と婚姻の意思がないのに欺罔し、日本において情交関係を結び、子の妊娠を知って交際を絶った」「日本人女性が19歳の処女であった」というものです。
今と貨幣価値は異なりますが、慰謝料額は60万円でした。
消費者物価指数で補正すると約160万円、案外安いでしょう。
近いところでは、昭和59年1月19日・名古屋高等裁判所の判例があります。
上記最高裁判所判決を引用しています。
「 警察官が、担当事件の被害者と警察署における事情聴取の時逢瀬を約束している」「被害者の立場のある者としては取調官に対しておのずから心理的弱みをいだくのを常とする段階において、これら状況を顧慮することなくむしろこれに乗じて情を通じ」たものであり、「子の認知を拒否して訴訟にまでなった」という事案です。
70万円の慰謝料請求が認められています。
消費者物価指数で補正すると約80万円、やはり、安いですね。
基本的に、妻がいることを知っていて、情交関係を持った女性から、別れ話を切出した男性への慰謝料請求は、難しいと考えた方が無難です。