配偶者のいる相手と、不倫をしますと、損害賠償をしなければなりません。
相手が、独身だと「嘘」をついていて、信じ切っていた場合は、損害賠償の義務はありません。
「配偶者がいる」という点ですが、戸籍上、離婚届を提出していないものの、離婚を前提として別居をしている相手と不倫をした場合、損害賠償をしなければならないでしょうか。
女性タレントAが、別の女性タレントOの別れた夫と不倫をしたということで話題になりましたね。
最高裁判所・平成8年3月6日判決があります。
「 夫が第三者と肉体関係を持った場合において、それが妻に対する不法行為となるのは、それが婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害する行為ということができるからであって、婚姻関係がその当時既に破綻していたときは、妻にこのような権利又は法的保護に値する利益があるとはいえないから、右第三者は妻に対して不法行為責任を負わないものと解するのが相当である」
「 配偶者の一方が第三者と肉体関係をもったとしても、その当時夫婦の婚姻関係が既に破綻していたときは、特段の事情のない限り、この第三者は他方配偶者に対して不法行為責任を負わない」
つまり「籍が入ったままであっても、婚姻関係が、不倫当時、別居するなどして既に破綻していたときは、右第三者は妻に対して不法行為責任を負わない」ということですね。
最高裁判所の判例は、離婚を前提として別居していた場合です。
婚姻関係は、間違いなく破綻していました。
別居していない場合はどうでしょう。
不倫の慰謝料を請求された人は、弁護士がつけば、たいてい「婚姻関係が、不倫当時、既に破綻していた」「損害賠償責任を負わない」と争ってきます。
「家庭内別居」=「婚姻関係破綻」という理由です。
ただ、裁判所は、そう簡単に「家庭内別居」「婚姻関係破綻」と認めてはくれません。
結局なにがしかの慰謝料を支払わされることは覚悟しておいた方がいいでしょう。
また、請求する側の相談を受けた側の弁護士は、配偶者との間の「最後の性交渉」がいつかということを聞きます。
あまりに間があきすぎていると、裁判官によっては、破綻と判断されかねません。
いずれにせよ、夫婦のこと、また、一番デリケートな部分ですから、弁護士は、細心の注意を払います。
なお「籍がはいったままであっても、婚姻関係が、不倫当時、既に破綻していたときは、右第三者は妻に対して不法行為責任を負わない」ことの「特段の事情」とされている例外ですが、最高裁判所の担当調査官(裁判官)の判例解説には「破綻をさせたの張本人である場合」「破綻前だけではなく、破綻後の不倫にも損害賠償をおわせる」という場合が想定されていると記載されています。